はじめに
「また新しいシステムを導入することになったけど、既存のツールとの連携はどうしよう…」「部署ごとにバラバラのツールを使っているから、データが分断されて全体像が見えない」─こんな悩み、あなたの会社でも聞き覚えがあるのではないでしょうか?
システムやSaaSツールが増えるたびに、それぞれを繋ぐための開発作業が増え、コストも工数も雪だるま式に膨らんでいく。多くの企業がこの状況に頭を悩ませています。
そんな中、注目を集めているのが「MCP(Model Context Protocol)」です。この記事では、MCPを実際に導入した国内外の企業事例をご紹介します。大手フィンテック企業から国内スタートアップまで、様々な業種・規模の企業がどんな成果を上げているのか。具体的な事例を通じて、あなたの会社でも活用できるヒントが見つかるはずです。
MCP導入で解消される「M×N問題」
企業が複数のAIツール(M個)と複数のデータソース(N個)を連携させる場合、従来はM×N通りの個別連携開発が必要でした。これが「M×N問題」です。システムが増えるたびに統合パターンは爆発的に増加し、開発コストも比例して膨らみます。
MCPは、AIモデル(クライアント)とデータソース(サーバー)の間に共通プロトコルを設けることで、この複雑さをM+Nまで削減します。各AIツールがMCPクライアント、各データソースがMCPサーバーとして標準化されることで、どのAIからもどのデータにもアクセスできる環境が整い、部門横断でのAI活用基盤構築が現実的になります。

自社システムへのMCP導入事例─M×N問題解消と部門横断活用
Block(Square):決済・在庫管理APIのMCP統合で業務自動化を実現
アメリカのフィンテック企業Block(旧Square)は、MCP導入の先駆的な事例です。BlockはMCPを活用して「エージェント型システム」を構築し、社内外の様々なデータソースとの連携を標準化しました。
特に注目すべきは、Squareの決済・在庫管理API全体をMCP対応させたことです。これにより、Squareを利用する販売事業者(顧客企業)は、AIエージェントを介して決済処理や在庫確認、売上分析などを自然言語で指示できるようになりました。
例えば、飲食店のオーナーが「今日の売上を確認して、在庫が少ない食材をリストアップして」とAIに頼めば、決済データと在庫管理システムを横断的に参照して即座に回答が返ってきます。従来は複数の管理画面を行き来しながら確認していた作業が、一つの対話で完結するのです。
【課題と解決】
- 課題: 複数サービス間の個別連携開発による技術的ハードル、顧客の操作負担
- 解決: MCP統合により自然言語での横断的操作が可能に、顧客満足度と利用頻度が向上

SaaS企業のMCP対応事例─新ユースケース創出と利用者拡大
Asana:プロジェクト管理をAI経由で自然言語操作
プロジェクト管理ツールのAsanaは、自社の「Work Graph」をMCP経由で公開し、ユーザーがAIアシスタントを通じて自然言語でタスク管理できるようにしました。
例えば、会議後に「昨日の会議メモからAsanaでプロジェクトを作成して、関係者に割り当てて」とAIに依頼すれば、MCP接続を通じてAsana上にプロジェクトが自動生成され、タスクが関係者に割り振られます。逆に、Asanaのタスク一覧や進捗状況をClaudeやChatGPTなどの他のAIクライアントから参照・更新することも可能です。
他のアプリで作成した計画をすぐAsanaタスク化したり、AsanaのタスクをIDEに取り込んで開発作業と連動させたりと、複数ツール間のシームレスなワークフローが実現しました。
【課題と解決】
- 課題: 他ツールとの連携不足、利用シーンの限定
- 解決: MCP対応で「どこからでもAsana」を実現、利用頻度と顧客エンゲージメント向上

国内企業の取り組み─開発生産性向上と部門横断データ連携
日本国内でも、MCPを活用した取り組みが始まっています。物流DXを手掛ける株式会社Hacobuでは、Go言語の静的解析ツールをMCPサーバー化し、社内のAIコーディング支援に活用しています。
開発者がコードレビューを依頼する際、AIがMCP経由で静的解析ツールにアクセスし、コードの品質チェックや改善提案を自動的に行います。これにより、コードレビューの効率が向上し、開発者はより創造的な作業に時間を使えるようになりました。
また、国内の大手企業でも、Salesforceや社内CRM、基幹システムなど部門ごとに分断されたデータサイロをMCPで繋ぐPoCが進んでいます。営業部門しかアクセスできなかったSalesforceのデータを、マーケティング部門や経営企画部門も横断的に検索・分析できるようになれば、データドリブンな意思決定が加速します。
【課題と解決】
- 課題: 開発ツールの個別統合、部門間のデータサイロ化
- 解決: MCP化でコード品質向上・開発サイクル短縮、全社横断AI基盤の構築
特筆すべき例として、日本のスタートアップhomula社は50以上のSaaSや基幹システムにワンクリックで接続できる「Agens MCP Hub」をリリースしました。GmailやSalesforce、Slackといった主要クラウドツールをわずか3ステップ・5分でAIエージェントに接続でき、従来比90%以上の開発工数削減を実現しています。
自社で一からMCPサーバーを構築する必要がなく、既存のSaaSをすぐにAI連携できる環境が整いつつあります。博報堂DYホールディングスなどが企業向けMCP導入支援サービスを開始するなど、導入ハードルを下げる取り組みも活発化しています。
まとめ─MCP導入で広がる可能性と次のステップ
本記事では、国内外の企業におけるMCP導入事例を通じて、システム連携の複雑さ解消・業務効率化・新たなユースケース創出といった具体的な成果をご紹介しました。BlockやAsanaのような海外企業から国内のHacobuやhomula社まで、業種や規模を問わずMCPが実践的な価値を生み出しています。
もしあなたの会社でも「システムが増えすぎて管理が大変」「部門ごとのデータが繋がらない」「AI活用を進めたいが既存システムとの統合が課題」といった悩みを抱えているなら、MCPは有力な解決策となるかもしれません。既に競合他社は動き始めており、早期に取り組むことで競争優位性を確保できる可能性があります。
本記事でご紹介した以外にも、10社以上の詳細な導入事例とROI分析、具体的な導入ステップとチェックリスト、業種別の活用パターンについては、ホワイトペーパー『MCP導入完全ガイド』で詳しく解説しています。
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