Starbucks Odyssey :スターバックスが目指すweb3・NFTを活用したロイヤルティ醸成

Starbucks Odyssey は、スターバックスが2022年12月から取り組むweb3技術(NFT等)を活用したロイヤルティプログラムです。本記事では、スターバックスがこれまでファンとの関係構築のために仕掛けてきた取り組みを紹介した上で、Web3技術を用いたロイヤルティプログラム「Starbucks Odyssey」により、どのように顧客との関係性が変化するのかを見ていきましょう。

私たちProofXは、全国の自治体や企業の皆さまと連携をして、NFTを活用したファンづくり・地域活性化に取り組んできました。今後は、Web3・NFTを活用した顧客ロイヤルティ醸成・ファンづくりの革新に挑戦していきます。

私たちが目指すWeb3・NFTを活用した顧客ロイヤルティ醸成・ファンづくりに取り組む先行事例として、Starbucks Odysseyを紐解いていきましょう。

本記事では、以下のように呼びます。
・ブランドの総称:「スターバックス」
・アメリカのシアトルを本社所在地とする「Starbucks Corporation」:「米スターバックス」
・日本法人である「スターバックスコーヒージャパン株式会社」:「スターバックスコーヒージャパン」

スターバックスの事例を含めて国内外の多数の事例を詳しく知りたい方は、以下レポートをご覧ください。

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目次

リアル×デジタルで顧客体験を強化

スターバックスの顧客ロイヤルティ醸成やファンづくりの取組は、今に始まったことではありません。皆様もご存じのように、これまで店内の満足度や快適さを向上する工夫や、デジタル上のロイヤルティプログラムを展開し、ファン獲得の成果を収めてきました。

リアルでは店舗の雰囲気・メニューでファンを獲得

スターバックスは、家や職場に次ぐ「サードプレイス」での過ごし方を提案したり、エスプレッソやフラペチーノ等、日本の喫茶・カフェチェーンでは珍しかった豊富なメニューを展開したりすることで、海外・国内に多くのファンを作ってきました。

また、2011年には、新しいブランドとして「STARBUCKS RESERVE®」を展開し始め、最高のコーヒー体験を楽しみたい顧客をターゲットとした新たな挑戦も始めました。

Starbucks Rewardsでデジタル施策で顧客体験を強化

Starbucks Coffeeは、公式アプリを活用したデジタル施策でも顧客体験の強化を図ってきました。その基盤にあるのが、ロイヤルティプログラム「Starbucks Rewards」です。

「Starbucks Rewards」は”リワードプログラム”と呼ばれることもありますが、本記事では”ロイヤルティプログラム”と呼びます。スターバックスコーヒージャパンジャパンリリースでも、”ロイヤルティプログラム”として紹介されています。

ロイヤルティ プログラム『スターバックス® リワード』を2023年1月11日(予定)にリニューアルスターバックスの体験をより豊かに、より気軽に楽しめるプログラムへ!30 Starsからすぐに使えるカスタマイズeTicketや、400 Starsためると交換できるオリジナルグッズなども登場お客様へ5年間の感謝をこめた「5 STARS PARADE」キャンペーンも実施中 | スターバックス コーヒー ジャパン (starbucks.co.jp)

アメリカでは、スターバックスカードを用いたロイヤルティプログラムが2008年にスタートした後に、モバイルアプリ上のロイヤルティプログラム「Starbucks Rewards」がスタートしました。

Starbucks Rewardsは、Web登録済みのスターバックス カードによる支払い額54円(税込み)につき、一つのStarが付与され、Reward eTicketと交換ができるプログラムです。eTicketは上限700円(税抜)でお好きなドリンクやフード、コーヒー豆1品などと引き換えできます。

スターバックスは、経済的なメリットを還元するだけでなく、「より良い体験をお届けするためのロイヤルティプログラム」と位置付けています。

世界では約5,800万人がStarbucks Rewardsを利用しています。また、2,740万人が90日アクティブリワードメンバーであり、これらのリワードメンバーがアメリカ国内の直営店の50%の売上を創出していると、2022年のInvestor Dayで公表しています。

「モバイルオーダー&ペイ」もロイヤルティプログラム会員限定サービスの1つです。利用者が、公式アプリ上で商品選択と決済までを完了することで、レジや商品受け取り口に並ぶ必要がなくなり、顧客体験の向上に繋がります。

モバイルオーダー利用率は、アメリカでは25%、中国では40%に上り、モバイルオーダーが一定の割合を占めていることが分かります。

日本ではデジタル施策による顧客体験向上に伸び代あり

日本においては、スターバックスコーヒージャパンが、2017年に「Starbucks Rewards」の提供を開始しました。サービス開始から約5年で1080万人(2022年12月31日現在)の登録者に到達しています。

また、日本ではモバイルオーダーが 2019年に導入され、現在は6% まで増加しています。短期間で一定の成長が確認できますが、日本のモバイルオーダー利用率は、40%の中国、25%のアメリカと比較すると小さいのが現状であり、伸び代が大きい市場とも言えます。

2023年1月11日には、プログラム内容が大きくリニューアルされました。1月11日から会員限定で、新商品の先行販売をする試みなども始まりました。

スターバックス® リワードがリニューアル|STARBUCKS® REWARDS|スターバックス コーヒー ジャパンスターバックス® リワードが リニューアル!より多くの皆様に楽しんでいただけるプログラムへリニューアルいたしました。www.starbucks.co.jp

今後も日本において、Starbucks Rewardsやモバイルオーダー&ペイを用いたデジタル施策により、顧客体験の向上が図られることが期待されます。


コラボレーションによる顧客体験の強化「Reward Together」

スターバックスは、一社単独のロイヤルティプログラムとしての機能だけでなく、他のロイヤルティプログラムとのコラボレーションも仕掛け始めています。
2022年10月には、デルタ航空のロイヤルティプログラムとのコラボレーションを発表しました。

スターバックスのこれまでの取り組み

2022年に、米スターバックスは、ロイヤルティプログラム会員が自分のアカウントを世界有数のブランドのロイヤルティプログラムに接続し、新しい特典とスターを獲得する方法を追加できる「Reward Together」という新たなプログラムを発表しました。

ロイヤルティプログラムのパートナーシップを通じて、米スターバックスはStarbucks Rewardsの認知度を高めるとともに、限定特典を提供しすることで新しい顧客を惹きつけることを目指しています。

実際に、スターバックスカナダは、2021年に旅行会社(Air Canada)と、2022年に金融機関(TD Bank Group)とのアカウントリンクパートナーシップを開始しています。

Starbucks and TD Bank Group (TD) Announce Partnership to Bring More Rewards to Canadians
Canadian Starbucks Rewards Members Can Now Earn Aeroplan Points at Starbucks Canada – Starbucks Canada

米スターバックスとデルタ航空のパートナーシップ

そして、2022年10月には、米スターバックスのロイヤルティプログラム(Starbucks Rewards)と、デルタ航空のスカイマイル(Delta SkyMiles)のアカウント保持者が、両アカウントをリンクさせることで新たな特典が受けられるサービスが開始されました。現時点では、アメリカ国内のみが対象となっています。

Delta Air Lines and Starbucks launch loyalty partnershipThrough the partnership, Delta SkyMiles and Starbucks Rewardsstories.starbucks.com

両アカウントを紐付けることにより、デルタ航空を利用した日にスターバックス対象店舗を利用するとスターを2倍、スカイマイル会員がスターバックスで購入すると100円につき1マイルを獲得できます。

2022年12月31日までにアカウントをリンクすることで500マイル、対象商品を購入することで150スターを獲得できる企画も開催されました。さらに、提携開始を記念して、2022年10月12日にデルタ航空のシアトル出発便を利用する方には、スターバックスの商品と交換可能な150スター分のスターカードがプレゼントされた、と発表されています。

期待される効果

ロイヤルティプログラムのパートナーシップにより、大きく3つの効果が期待されます。

  1. タッチポイントの増加による顧客体験の向上
    会員プログラムの相互連携により、顧客はより幅広いタッチポイントでスターマまたはマイルを獲得することができます。こうした変化により、利用者はより効率的に各ロイヤルティプログラムのランクやレベルを高めるチャンスを獲得します。さらに、相互連携による魅力的な特典を設けることで、サービスを利用する頻度が向上したり、利用金額が増加したりする効果が期待できます。
  2. 利用頻度と単価が異なるサービス同士の意識づけ
    スターバックスコーヒーは週に数回の頻度で数百円規模、デルタ航空は数ヶ月から一年に1度の頻度で数万円規模の商品・サービスを購入するのが一般的です。
    デルタ航空視点では、顧客に日常的に意識させるとともに、数ヶ月に一度利用する際に溜まったマイルにより自社の利用を促す効果が期待できます。一方で、スターバックス視点では、数万円と大きな支出を伴う航空券の代金を抑えるために、コーヒーを購入するという日常的な行為において、自ブランドの選択を促す効果が期待できるでしょう。
  3. 双方の顧客に関する情報の獲得
    会員プログラムの連携により、これまで自社サービスの利用に関する情報に閉じていた状態から、もう一方のサービスの利用に関する情報も取得することができます。両者はリリースにおいて、ここで得た情報を用いて、サービス全体の改善や効果的な宣伝広告などに役立てる方針を示しています。さらには、一人の顧客に関して、より多くの接点での情報を取得できるため、よりパーソナライズされた特典や広告を設計することもできるでしょう。

NFTを用いた顧客との関係性の革新「Starbucks Odyssey」

そして満を辞して、2022年9月には、NFTなどweb3技術を用いたロイヤルティプログラム「Starbucks Odyssey」についての情報を公開しました。
2022年12月には、従業員や一部の顧客向けにベータ版がリリースされています。

The Starbucks Odyssey Begins On Dec. 8 the Starbucks Odyssey Beta experience, powered by Wstories.starbucks.com

Starbucks Odyssey とは

Starbucks Odysseyは、これまで提供されてきたStarbucks RewardsプログラムをNFTなどのWeb3技術によって拡張したロイヤルティプログラムです。Starbucks Odysseyでは、「ジャーニースタンプ」と呼ばれるNFTが発行される仕組みも盛り込まれています。

本プログラムは、Web3プラットフォーム「Forum3」との協力によって実現されました。
また、NFTの発行基盤には、低コストかつ高速な取引を特徴とする「ポリゴン(Polygon/MATIC)」のブロックチェーン技術が活用されています。

web3ロイヤルティプログラムstarbucks odysseyの操作画面(1/2)
web3ロイヤルティプログラムstarbucks odysseyの操作画面(1/2)
web3ロイヤルティプログラムstarbucks odysseyの操作画面(2/2)
web3ロイヤルティプログラムstarbucks odysseyの操作画面(2/2)

新たな体験を行うことでNFTを獲得

利用者は、「ジャーニー」と呼ばれる新たな体験を行うことにより、「ジャーニースタンプ(NFT)」と「Odysseyポイント」を獲得することができます。
「ジャーニースタンプ(NFT)」のレア度に応じて「Odysseyポイント」が割振られており、「ジャーニースタンプ(NFT)」の獲得に伴い「Odysseyポイント」も増えていきます。

ジャーニーの例としては、以下のアクティビティが挙げられています。
①コスタリカにあるスターバックスのコーヒー農場のバーチャルツアーへの参加
②スターバックスの伝統に関するトリビア(Q&A)の実施
③「Starbucks for Life」のようなインタラクティブなゲームへの参加

レベルアップ条件を達成し、より特別な報酬を獲得

ベータ版では「Odysseyポイント」の数に応じて、1000〜2999ポイント、3000〜5999ポイント、6000ポイント~の3つのレベルが用意されています。各レベルアップ条件を満たすと、報酬として以下の特典や体験へアクセスできるようになります。

《下段に行くほどより高いレベルアップ条件達成時の報酬》
・バーチャルエスプレッソマティーニ作りクラスへの参加
・ユニークな商品やアーティストとのコラボレーションへの参加
・スターバックスリザーブロースターの限定イベントへの参加
・コスタリカのスターバックスハシエンダアルサシアコーヒー農場への旅行

Starbucks Odyssey market上で、スタンプNFTの売買も可能

Nifty Gatewayが構築する「Starbucks Odyssey market」というマーケットプレイス上で、利用者間でデジタルスタンプNFTを売買できる機能も搭載されます。

また、マーケットプレイス上で限定のデジタルスタンプNFTを購入することもできます。既に、以下のマーケットプレイスで、デジタルスタンプの販売が始まっていることを確認できます。

ウォレットや暗号通貨は必要なく、利用者はクレジットカードで直接デジタルスタンプを購入することができるのも特長です。購入したデジタルスタンプはレア度に応じたボーナスポイントが割り振られており、トークンゲーティングの条件となる「Odessyポイント」として加算されていきます。

starbucks’s NFT Collection | Nifty Gateway

NFT×ロイヤルティプログラムによる変化

Web3化による効果として以下の3つを取り上げます。

  1. ブランドへの理解の深化よる顧客ロイヤルティ醸成
    NFTを獲得するために利用者が行うジャーニーの内容として、コーヒー農場のバーチャルツアー、ブランドの歴史に関するクイズなどが挙げられます。これらはすべて利用者にブランドへの理解を深め、愛着を強く抱かせるように設計されています。NFT獲得に向けてジャーニーを行う中で、ブランドへのロイヤルティが高まり、利用頻度が高まる、他店舗ではなくスターバックス店舗の利用率が高まる、などの変化が期待できます。
  2. NFTの保有をゲーミフィケーションにより動機づけ
    Starbucks Odysseyで報酬として付与されるNFTを獲得するための条件として、「5週間連続でドリンクを購入する」等も設けられています。報酬を保有可能なデジタルデータであるNFTとすることで、利用者はNFTを保有したい・収集したい、という気持ちから、NFTの獲得条件の達成に向けて、利用頻度を高める等の変化が期待できるでしょう。
  3. 利用者同士を繋ぐコミュニティの形成
    スターバックスは、これまでリアル店舗を「サード・プレイス」とする取組を行ってきましたが、利用者間の関りは少なくコミュニティという印象は強くありませんでした。NFTをベースにしたロイヤリティプログラムとNFTのマーケットプレイスを整備することで、レベルアップ条件の達成やNFTの収集・売買に関する情報交換が活発になることが期待されます。このようにスターバックスは、NFTを起点としてバーチャル上で、利用者同士のやり取りのあるコミュニティとしての「サード・プレイス」の形成も狙っているのです。

Web3に関する知識がなくても利用可能

Starbucks Odysseyの利用者は、Web3・ ブロックチェーン・NFTといったテクノロジー周りに関する知識を持っていなくても、ハードルなく利用することができます。暗号資産もウォレットも必要ありません。

スターバックスは「NFT」というワードの使用を避け、既存および新規のリワード会員が親しみやすいよう「デジタルスタンプ」と呼んでいる点も特徴的です。このような意識は、多くの利用者をサービスにオンボードさせる上で参考にすべき戦略といえるでしょう。


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ProofXの目指す世界

スターバックスは、リアルとデジタルを組合せ、顧客ロイヤルティ向上やファンづくりの成果をあげてきました。
そして、他企業・ブランドと連携した「Starbucks together」や、NFTなどのWeb3を活用したロイヤルティプログラム「Starbucks Odyssey」を活用して、顧客ロイヤルティ向上を加速させています。
今後も、より多くのファンを魅了していくでしょう。

Web2.0時代において、多くの企業によりロイヤルティプログラムが導入されてきました。
成果が表れている事例ばかりではなく、以下のような課題を抱えている企業も多いのではないでしょうか。

  • CACが高止まりしており、LTVの向上が急務である
  • 他企業とコラボして相互送客したいが、コストが高く実行に移せない
  • 顧客との接点が少なく、顧客データをあまり取れていない

Web3時代に突入している今まさに、「Starbucks Odyssey」のようにロイヤルティプログラムが大きく変化するタイミングなのです。

私たちProofXは、今後、ロイヤルティプログラムを簡単にWeb3に接続してアップグレードし、顧客体験の向上に貢献して参ります。さらに、他企業のロイヤルティプログラムとのコラボレーションもシームレスに実現していきます。

ProofXは現在、Web3時代のロイヤルティプログラムを共に創っていく企業・自治体の皆様を募集しています。実証実験やPoCを通じて、共に日本の先頭を走ることにご興味のある皆さまからは、ぜひ以下のフォームよりご連絡ください。ご連絡お待ちしております。

ProofX問い合わせフォーム

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